社労士試験の合格、おめでとうございます。
ほっとしたのも束の間、「で、次は何をすればいいんだろう」と検索された方が多いのではないでしょうか。登録、事務指定講習、費用、そもそも登録すべきなのか——情報が散らばっていて、全体像がつかみにくい分野です。
この記事では、合格後にやることを3つのステップに整理しました。あわせて、検索で多い「登録しないと社労士を名乗れるのか」という疑問にも、社会保険労務士法の条文を引用してお答えします。
結論:やることは3つだけです
細かい書類は多いのですが、やることの骨格は3つです。
- 自分が「登録できる状態」かどうかを確かめる
- 登録するかどうかを決める
- 登録するなら、費用を用意する
順番に見ていきます。
ステップ1:自分がどのルートか確かめる
試験に合格しただけでは、まだ「社会保険労務士」ではありません。社会保険労務士法には、こう書かれています。
次の各号の一に該当する者であつて、労働社会保険諸法令に関する厚生労働省令で定める事務に従事した期間が通算して二年以上になるもの又は厚生労働大臣がこれと同等以上の経験を有すると認めるものは、社会保険労務士となる資格を有する。
一 社会保険労務士試験に合格した者
(社会保険労務士法 第3条第1項より抜粋)
つまり「試験の合格」に加えて、次のどちらかが必要です。
- 厚生労働省令で定める事務に、通算2年以上従事していること
- 厚生労働大臣が、それと同等以上の経験があると認めること
この2つ目の代表が、よく聞く「事務指定講習」です。全国社会保険労務士会連合会が実施しており、修了すると「2年以上の実務経験」と同等と認められます。実務経験が2年に届かない方は、講習を修了することで登録に進めます。
「実務経験2年」として数えられる仕事
「自分の仕事は実務経験に入るのだろうか」と迷う方が多い部分です。対象となる事務は、社会保険労務士法施行規則で7種類が定められています。
| 対象となる事務 | |
|---|---|
| 1 | 国や地方公共団体の公務員として従事する、労働社会保険諸法令の施行事務 |
| 2 | 労働社会保険諸法令にもとづいて設立された法人・日本年金機構の役員(非常勤を除く)または従業者として従事する実施事務 |
| 3 | 労働保険事務組合・国民年金事務組合などの役員(非常勤を除く)または従業者として従事する事務 |
| 4 | 公務員、労働組合の職員、会社などの法人や個人事業の従業者として従事する、労働社会保険諸法令に関する事務(特別な判断を要しない単純な事務は除く) |
| 5 | 労働組合の役員として専ら従事する業務 |
| 6 | 法人等の労務を担当する役員として従事する業務 |
| 7 | 社労士・社労士法人の補助者として従事する、労働社会保険諸法令に関する事務 |
(社会保険労務士法施行規則 第1条の11をもとに作成)
ポイントは2つあります。
ひとつは、公務員の方も対象になることです(1号・4号)。もうひとつは、4号に「特別な判断を要しない単純な事務を除く」というただし書きがあることです。書類を右から左に流すだけの作業は含まれません。
なお、2号・3号には「非常勤の者を除く」、5号には「専ら従事する」という条件が付いています。ご自身が該当するかどうかの最終判断は、全国社会保険労務士会連合会にご確認ください。
実務経験が2年に満たない場合
事務指定講習を受けます。講習は、教材で学んで課題を郵送する「通信指導課程(4か月)」と、動画で学ぶ「eラーニング講習」の組み合わせです。通いの講義はないため、働きながら受けやすい形になっています。
募集は例年、年1回です。申込期間は数週間と短く、逃すと次の年まで待つことになります。
2026年度(第46回)の事務指定講習は、申込期間が2026年11月4日〜11月25日、受講料が77,000円(税込)と案内されています(2026年10月時点・全国社会保険労務士会連合会の案内より)。申込みはWebで行い、期間内に受講料の支払いまで終えると完了です。開催時期・申込期限・受講料は年度によって変わるため、申し込む前に必ず連合会の最新の案内を確認してください。
なお、連合会は「合格した年に申し込まず、次年度以降に申し込んでも問題ない」と案内しています。今年は見送るという選択もできます。
ステップ2:登録するかどうかを決める
登録して初めて「社会保険労務士」になります。
社会保険労務士となる資格を有する者が社会保険労務士となるには、社会保険労務士名簿に、氏名、生年月日、住所その他厚生労働省令で定める事項の登録を受けなければならない。
(社会保険労務士法 第14条の2第1項)
登録には、働き方に応じて種類があります。
- 開業:事務所を定めて、自分で報酬を得て業務を行う場合(第14条の2第2項)
- 勤務:事業所に勤務して、社労士の事務に従事する場合(同第3項)
- その他:上のどちらにも当てはまらない場合
勤務先で社労士として仕事をするなら勤務登録、独立するなら開業登録、いますぐ実務には就かないが社労士として登録しておきたい、という場合はその他登録、というのが大まかな目安です。
「登録しないと、社労士を名乗れませんか?」
検索で多い疑問なので、はっきりお答えします。
結論から言うと、登録していない方は「社労士」と名乗れません。これは慣習ではなく、法律で定められています。
社会保険労務士でない者は、社会保険労務士又は社労士その他の社会保険労務士に類似する名称を用いてはならない。
(社会保険労務士法 第26条第1項)
前の章のとおり、「社会保険労務士」になるのは登録を受けたときです(第14条の2第1項)。したがって、合格しただけ・講習を修了しただけの段階では、まだ社会保険労務士ではありません。名刺やプロフィールに肩書きとして「社労士」と書くことはできない、ということになります。
また、報酬を得て社労士の独占業務(労働社会保険に関する書類の作成や提出の代行など)を行うことも禁止されています。
社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、第二条第一項第一号から第二号までに掲げる事務を業として行つてはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び政令で定める業務に付随して行う場合は、この限りでない。
(社会保険労務士法 第27条)
では、履歴書や名刺にはどう書けばいいのか
名乗れないのは「社会保険労務士」という資格名のほうです。「社会保険労務士試験に合格した」という事実そのものは、変わりません。
履歴書の資格欄であれば、次のような書き方であれば事実と食い違いません。
- 社会保険労務士試験 合格(2026年)
登録していないのに「社会保険労務士」とだけ書くと、第26条に触れるおそれがあります。短く書きたい気持ちは分かりますが、「試験 合格」の4文字を省かないでください。
登録しないという選択について
登録には費用がかかり、毎年の会費も発生します。そのため、実務に就く予定が当面ない方が、登録を見送ることは珍しくありません。
試験の合格に有効期限はありません。必要になったときに登録すればよく、合格が無効になることはありません。事務指定講習の修了証にも、有効期限はないと連合会が案内しています。
ただし上のとおり、未登録のあいだは「社労士」を名乗れず、独占業務も行えません。「いつか使うかもしれないから、とりあえず名乗っておく」ということはできない、という点だけご注意ください。
ステップ3:費用を把握する
登録にかかるお金は、大きく4種類に分かれます。
| 何にかかるか | 誰に払うか | 金額の決まり方 |
|---|---|---|
| 事務指定講習の受講料(受ける人のみ) | 全国社会保険労務士会連合会 | 年度ごとに案内で示される(2026年度は77,000円・税込) |
| 登録免許税 | 国 | 法令で定められている |
| 登録手数料 | 全国社会保険労務士会連合会 | 連合会が定める |
| 入会金・年会費 | 所属する都道府県の社労士会 | 都道府県会ごとに違う |
注意していただきたいのは、いちばん下です。
入会金と年会費は、所属する都道府県の社労士会ごとに決められています。そのため「社労士の登録費用はいくら」と一律には言えません。東京と大阪と福岡では、金額が異なります。
さらに、開業登録と勤務登録で会費が違う会もあります。
ご自身が所属することになる都道府県会の公式サイトで、「入会金」「年会費」「開業/勤務の別」の3点を必ず確認してください。ここを見落とすと、想定より年間の負担が大きくなることがあります。
勤務先が払ってくれる場合があります
勤務社労士として登録する場合、登録費用や年会費を会社が負担してくれることがあります。
就業規則や資格手当の規程に記載がないか確認し、書かれていない場合も、上司や人事に相談してみる価値はあります。
よくある質問
事務指定講習に「落ちる」ことはありますか
一発勝負の試験ではありませんが、修了するための要件があります。通信指導課程では課題を期間内に提出すること、eラーニング講習では各科目の動画学習を終え、効果測定のための試験で良好な成績を収めることが求められます。期限を過ぎたり、要件を満たさなかったりすると修了できません。いちばん大事なのは、提出期限の管理です。
働きながらでも受けられますか
働きながら受講している方は多くいます。通信指導とeラーニングで構成されており、会場に通う必要はありません。ただし課題の提出期限やeラーニングの受講期間が決まっているため、スケジュールは事前に確認しておいてください。
公務員の経験は実務経験になりますか
施行規則第1条の11の1号に「国又は地方公共団体の公務員として従事する労働社会保険諸法令の施行事務」が挙げられています。また4号でも、公務員として従事した労働社会保険諸法令に関する事務が対象とされています。ご自身の担当業務が該当するかどうかは、連合会にご確認ください。
パートや派遣でも実務経験に入りますか
施行規則第1条の11の4号は「会社その他の法人……の従業者として従事する労働社会保険諸法令に関する事務」としており、条文上は正社員であることを条件にしていません。ただし同じ4号に「特別な判断を要しない単純な事務を除く」とあるため、業務の中身が問われます。勤務日数などの扱いも含め、ご自身のケースは連合会にご確認ください。
合格に有効期限はありますか
社会保険労務士試験の合格そのものに期限はありません。今年登録しなくても、合格が無効になることはありません。
まとめ
- 試験の合格だけでは、まだ社会保険労務士ではありません(法第3条・第14条の2)
- 登録には「実務経験2年」か「事務指定講習の修了」が必要です
- 実務経験として数えられる事務は、施行規則で7種類が定められています
- 登録していない方は「社労士」と名乗れません(法第26条)。履歴書には「社会保険労務士試験 合格」と書きます
- 費用のうち入会金と年会費は、都道府県会ごとに違います。必ず所属予定の会で確認してください
迷ったときの相談先は、全国社会保険労務士会連合会と、所属予定の都道府県社労士会です。制度の細かい運用や金額は変わることがあるため、最終的な確認は公式の案内で行ってください。
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